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思索に耽る苦行の軌跡

浅川マキと高田渡と江戸アケミ

何時もはClaasic音楽漬けの日々、特にシュニトケ(ロシア)、ベルト(エストニア)、グバイドゥーリナ(ソ連->ドイツ)、武満徹などロシアと日本を含めたロシア周辺の現代作曲家の作品を好んで聴く日々を送ってゐるが、時折、日本のMusicianで言へば浅川マキと高田渡と江戸アケミの三人の歌声が無性に聴きたくなることがある。

閑話休題。

音楽と言語は現代理論物理学の実践に他ならないとつくづく思ふ今日この頃だが、量子力学的に言へば、音楽は波を主軸に、言語は量子を主軸に置いた理論物理学の実践である。

先づ音楽であるが、音符などの記号といふ『量子』と、音といふ『波』の二面性がある。しかし、音楽の記譜に用ひる記号は音の状態のみに特化したものなので音楽は感性的で抽象性が強い表現方法である。多分、一流の演奏家は作曲家の頭蓋内を覗き込むかのやうに眼前に記譜された楽曲を理解してゐるに違ひないと思ふが、私のやうな凡人には楽曲の演奏を聴いて魂が揺さぶられるが、何故? と問はれてもそれは言葉では表現出来ないのである。

次に言語であるが、文字といふ『量子』と、読みといふ『波』の二面性がある。特にここでは日本語に絞って話を進めるが、もしかすると理論物理学の実践といふ点で言へば日本語が最先端を行ってゐるのかもしれない。

埴谷雄高は何も書かれてゐない原稿用紙を『のっぺらぼう』と表現し、その『のっぺらぼう』を埴谷雄高独自の宇宙論へまで推し進めたが、『のっぺらぼう』は正に虚体論に直結してゐる。

何も書かれてゐない原稿用紙の『のっぺらぼう』の状態は私がいふ『虚の波体』の状態でのことである。じっと何も書かれてゐない原稿用紙を前にして書くべきものの姿が全く表象出来ない状態が所謂『虚の波体』の状態である。すると頭蓋内の暗黒の中に何やら『存在』してゐるやうな気配が感じられ始めるのだ。これが私のいふ『陰体』である。更に集中し頭蓋内の『それ』へSearchlightを当てるとその『陰体』はその姿を表象する。これがある言葉が出現する瞬間である。

さて、日本語は漢字の読みがいくつもあって、つまり量子力学的に『波が重なり合ってゐる』状態を実践してゐて面白い。書き手の頭蓋内で言葉の量子力学的状態が決したならば書き手は眼前の原稿用紙に先づ一文字を記す。これが言葉の『量子化』である。そして、最初に記された言葉の『状態』を更に固着化するために次の言葉が書き連ねられるのである。これは正に現代理論物理学の最先端の実践に他ならない。特に漢字の読みが幾つもある日本語はその更に先端を実践してゐると思はれる。

閑話休題。

さて、本題に戻ろう。浅川マキ以外はもう故人である。そして私的に数時間ではあるが直接本人と歓談したことがあるのも浅川マキ一人きりである。

浅川マキは浅川マキにしか表現出来ない独自の音楽世界があって彼女はそれとの格闘の日々を過ごしてゐるといっても過言ではない。後はInternetで検索してみれば彼女のことが少しは理解できるかもしれないが、普通の音楽が好きな人には彼女の『異端』の音楽は薦められない。彼女の音楽の核は『詩』である。

次にフォーク歌手の高田渡だが岡林信康や吉田拓郎に代表されるフォークが好きな人には高田渡は「何、これ」と言はれるに違ひない独特の味を持ったフォーク歌手である。何といっても山之口獏の詩を高田渡が歌った楽曲が一番である。高田渡は晩年私の好きな詩人の一人でシベリア抑留を生き延びた石原吉郎の詩を歌ふことに挑戦し始めたが、まだ石原吉郎の詩の言葉の存在感を手なずけられないままあの世へ行ってしまった。石原吉郎の詩の言葉の重さを手なずけた高田渡の歌が聴きたかったが返す返す間も残念無念である。

最後に江戸アケミであるが、彼は知る人ぞ知る伝説のバンド、JAGATARAのVocalistである。パンク、ファンク、レゲエ、中南米の音楽からさて、アフリカ音楽へ挑戦しようとしたところであの世へ行ってしまった。彼の書く歌詞は最高である。全てが江戸アケミの遺言になってゐるのだ。晩年、精神を病んでしまった彼のその人間の壊れ行く姿が克明に彼の音楽には記録されてゐるのでこれまた万人には薦められない音楽である。

浅川マキ、高田渡、そして江戸アケミの三人三様の独自の音楽世界は私の栄養剤である。

積 緋露雪 05:01 | コメント(0) | トラックバック(0) | 思索
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